記事概要

対象者
  • 村上春樹の長編にチャレンジしてみたいがどの作品から読み始めたらよいか分からない方
目的
  • 初めて手にとる村上春樹の長編小説が決まる

いちごバター

読書歴5年、村上春樹さんの長編を読破した夫婦が、初心者におすすめの3冊を、理由、面白ポイントをまとめて紹介していきます。

おすすめ作品・理由

おすすめ作品
  • 国境の南、太陽の西
  • スプートニクの恋人
  • 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

※以下村上春樹作品のポジショニングマップの中で赤枠で囲んだ3作品になります。

【横軸】

物語性⇔文学性

※大前提、村上春樹作品はすべての作品に文学性があります。その中で、どれだけ物語性があるかどうかを主観的に判断して位置を決めています。

【縦軸】

幻想的⇔現実的

※現実から逸脱した設定が多いほど、幻想的な作品として位置を決めています。

おすすめしたい理由

▶コンパクトな分量

それぞれ文庫で300~400ページほどで簡潔であり、村上春樹長編作品の中では比較的コンパクトです。

▶飲み込みやすい内容

その物語がどこへ向かって動いているのか飲み込みやすいことが特徴です。

※『スプートニクの恋人』は物語性は感じづらいかもしれませんが、次の展開が気になる作品です。

▶村上春樹のメタファーを味わえる

村上春樹作品の一つの特徴であるメタファーが、コンパクトな物語でありながらしっかり味わえます。

「この部分が意味することは何か?」を読み終えた後に考える楽しさを味わってみてください!

▶村上春樹エッセンスが詰まっている

文体、性描写、音楽、食事、外国、恋愛、喪失、死、世界の二面性、など村上春樹作品ならではのお洒落エッセンスが詰まっており、文章を読むだけでも楽しい気分を味わえます。

読む順番は??

それぞれ独立しているのでどの順番でもOK!

一番読みやすい作品は?

この中では現実的で物語性のある『国境の南、太陽の西』、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』が読みやすいと思います。

この後に読むべき作品は?

村上春樹の世界観が何となく理解できた方には、代表作『ノルウェイの森』がおすすめです。

物語性に魅了された方には、『1Q84』、『騎士団長殺し』、『海辺のカフカ』のような、村上さん独自の世界観が色濃く物語性がある作品がおすすめです!

各作品の面白さを紹介!

国境の南、太陽の西

今ある幸せか、心の穴を埋める初恋か――人生の選択を突きつける物語

【出版年】

1992年 / 文庫299ページ

【おすすめ理由】

現実的で物語性がある作品であり、テーマが普遍的で心を動かすため。

【面白ポイント】

今ある幸せか、心の穴を埋める初恋か――人生の選択を突きつける物語です。

一人っ子であることに孤独を抱えていた「僕」が、同じ境遇の島本さんに惹かれた初恋の記憶が物語の核になっています。

やがて大人になり、妻と娘、ジャズバー経営という満ち足りた生活を手に入れた「僕」の前に、島本さんが再び現れます。

かつてイズミを傷つけた過去を抱えながら、今の幸せと島本さんへの想いの間で揺れる葛藤が作品の見どころです。

ジャズの旋律をBGMとして、満たされない心と人生の選択をじわりと考えさせてくれる一冊です。

スプートニクの恋人

かみ合わない恋心と、情緒と情動の二面世界を描く物語

【出版年】

1999年 / 文庫318ページ

【おすすめ理由】

長編の中では比較的コンパクトでありながら、美しい文体と村上作品特有の世界の二面性を味わえるため。

【面白ポイント】

かみ合わない恋心と、情緒と情動の二面世界を描く物語です。

僕が想うスミレ、スミレが想うミュウという関係の中で、「大切さ」と「恋」にずれが生じていきます。

本作では、情緒が重視されるこちら側の世界と、性欲のような情動が前面に出る向こう側の世界が対比的に描かれ、現実の世界と重なり合います。

スミレはその境界を越え、情動の世界に触れることで、自分にとって本当に大切なものを見つめ直していきます。

この二面性をコンパクトに描き切る構成に、村上春樹らしさを強く感じさせる一冊です。

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

喪失の過去に向き合い、新たな一歩を踏み出す物語

【出版年】

2013年 / 文庫421ページ

【おすすめ理由】

現実的で物語性がある作品であり、喪失という村上春樹らしいテーマが描かれるため。

【面白ポイント】

喪失の過去に向き合い、新たな一歩を踏み出す物語です。

多崎つくるが、高校時代に完璧な関係を築いていた5人の中で、自分だけが突然切り離された理由を追い求めていく過程が細かく描写されます。

一方で、沙羅と互いに好意を持ちながらも、過去の傷がその関係に影を落としているところが、物語として読者を惹きこむポイントになります。

喪失からの立ち直りという村上春樹らしい主題が、今回は比較的まっすぐ物語に落とし込まれているため、村上作品初心者の方にもとても読みやすいと思います。

現実的なテーマかつ物語的に味わえる一冊です。

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