記事概要

対象者
  • 宇佐見りんさんの書籍を読んでみたい方
  • 純文学に挑戦してみたい方
  • 『推し、燃ゆ』以外の長編にどんな作品があるか知りたい方
目的
  • 手に取りたい宇佐見りんさんの作品が見つかる

いちごバター

読書歴5年、2人で500冊以上読んできた本好き夫婦が、宇佐見りんさんの長編作品の面白さをご紹介します!

宇佐見さん作品の特徴

特徴

痛みの極限から“愛”を掘り起こす文学

おすすめしたい人

▶ しんどい物語をあえて読みたい方

宇佐見りん作品では、読むのがつらくなるほど生々しい感情や家庭の軋みが、容赦なく描かれます。

しかしそれは単なる悲劇ではなく、その奥にある“どうしようもない愛や執着”まで掘り下げられており、読後には重く深い余韻が残ります。

▶ 家族関係にモヤモヤを抱えている方

理想的とは言えない家族の姿や、逃げ場のない関係性の苦しさが、リアルに描かれています。

共感というよりも「わかってしまう痛み」を通して、自分の中にある感情を見つめ直すきっかけになるはずです。

▶ 「普通に生きること」に違和感を抱えている方

社会や周囲にうまく馴染めない感覚や、生きづらさが、登場人物を通して鮮明に描かれます。

その歪さや極端さに触れることで、「それでも生きるとは何か」を静かに問いかけられる読書体験が得られます。

読む順番は??

それぞれ独立しているのでどの順番でもOK!

一番読みやすい作品は?

『推し、燃ゆ』が一番読みやすいと思いました。

逆に『かか』は文体が特殊なので、やや読み進めにくいかと思います。

作品紹介

かか

壊れた母への憎しみの奥から愛が引きづり出される物語

【出版年 / 分量 / 受賞歴】

2019年 / 単行本115ページ / 第56回 文藝・第33回 三島由紀夫賞

【面白ポイント】

壊れた母への憎しみの奥から愛が引きづり出される物語です。

特殊な文体と、うーちゃんが弟のみっくんに語り掛ける形式で物語が進行することに、新文学の手触りを感じます。

かかの癇癪、ととの態度、ばばの冷遇、明子の意地悪など、読んでいてうんざりするほどの苦しい描写が折り重なっていきます。

それでも、その苦しさや憎しみの中から母への愛が浮かび上がる様子に惹きこまれていきます。

内容の重たさに覚悟が必要ですが、その分だけ深く心に残る一冊です。

推し、燃ゆ

普通に生きれない私を支える【推し】を切実に描いた物語

【出版年 / 分量 / 受賞歴】

2020年 / 単行本120ページ前後 / 第164回 芥川龍之介賞

【面白ポイント】

普通に生きれない私を支える【推し】を切実に描いた物語です。

病名のつく気質を抱え、うまく生きられないあかりの閉塞感が、家族やバイト先での出来事を通してリアルに伝わってきます。

母の注意、姉の不満、父の月並みな言葉が積み重なるほど、あかりの居場所のなさが際立ちます。

そんな中で出会った上野真幸という推しが、あかりにとって生きる意味そのものであり、「背骨」のような存在として描かれています。

推しの炎上と引退があかりの心を揺らすことで、推しへの切実な思いと時勢を鋭く映し出す一冊です。

くるまの娘

歪んだ家族を見捨て置けない娘の葛藤を描いた物語

【出版年 / 分量 / 受賞歴】

2022年 / 単行本170ページ前後 / 野間文芸新人賞候補・織田作之助賞候補

【面白ポイント】

歪んだ家族を見捨て置けない娘の葛藤を描いた物語です。

脳梗塞後に情緒不安定になった母の癇癪や、暴言と優しさを併せ持つ父、兄や弟が家を離れていった家庭の中でのかんこの苦しさと恨みが丁寧に描かれます。

そのうえで、母がかつての家族を取り戻そうとする愛情や、父の優しさも知っているからこそ、この家族を見捨て置けないという感情がより重く響きます。

車内で家族が言い争うシーンは、爆発とさりげない鎮火を繰り返す家庭のリアルを象徴的に映し出しています。

いがみ合いながらも同じ車に乗り続けるしかない家族の関係を、痛切に描き出した一冊です。

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