記事概要

対象者
  • 夏目漱石の作品にチャレンジしてみたい方
目的
  • 夏目漱石「初期の代表作」への興味が湧き、手に取る1冊が決まる

いちごバター

読書歴5年、2人で500冊以上読んできた本好き夫婦が、夏目漱石への愛を込めて、初期の代表作の面白さをご紹介します!

初期の代表作のご紹介

初期作品の特徴

多様な文体と主題を通して、近代人の自意識と社会を模索した実験的作品群

ポジショニングマップ
夏目漱石 代表作 初期

※『坑夫』、晩年作『道草』『明暗』はポジショニングマップには含まれていません。

【横軸】

社会志向⇔内面志向

作品が「社会や他者」に向いているか、「個人の内面や自意識」に向いているかを表しています。

【縦軸】

口語的⇔文語的

会話的で読みやすい文体か、漢語調・観念的で格調高い文体かを表しています。

読む順番は??

それぞれ独立しているのでどの順番でもOK!

一番読みやすい作品は?

分量、文体、内容から私たちは『坊ちゃん』が一番読みやすいと感じました。

『坑夫』は初期の代表作か?

『坑夫』は『虞美人草』の後に発表された作品で、初期作品の一つとして位置づけられると考えています。

今後『坑夫』も追加予定です。

作品紹介

吾輩は猫である

人間の滑稽さを、猫が楽しげに暴いていく物語

【出版年 / 形式 / 分量】

1905〜1906年 / 長編(雑誌連載) / 文庫本 約500〜600ページ

【おすすめしたい人】

社会風刺や知識人文化を、ユーモアある語り口で楽しみたい人

【面白ポイント】

人間の滑稽さを、猫が楽しげに暴いていく物語です。

名前のない猫が苦沙弥先生とその周囲の人間たちを観察し、人間社会の妙な常識や見栄を軽やかに炙り出していきます。

登場人物たちの会話はどれもウィットに富んでおり、とくに偏屈な苦沙弥先生と皮肉屋の迷亭の掛け合いは、知的な面白さに満ちています。

哲学や教養的な話題が自然に織り交ぜられているため、物語を楽しみながら、「人間とは何か」をふと考えさせられる作品になっています。

読み終えたあとには、自分自身も猫の隣から、近現代の有象無象な人間社会を眺めていたような気分になる作品です。

坊ちゃん

正直者が狡猾な者に真っ向から噛みつく、痛快な勧善懲悪物語

【出版年 / 形式 / 分量】

1906年 / 中編(雑誌掲載) / 文庫本 約150〜200ページ

【おすすめしたい人】

読みやすい文体で、明快な人物描写や社会批評を楽しみたい人

【面白ポイント】

正直者が狡猾な者に真っ向から噛みつく、痛快な勧善懲悪物語です。

無鉄砲で正直な坊ちゃんのべらんめえ調の軽快な語り口で、物語はテンポよく進み心地よく読めます。

家族から疎まれながらも清だけが坊ちゃんを信じ続ける関係が、物語全体にあたたかさを添えています。

四国の中学校という閉じた環境で、赤シャツや野だの狡猾さが幅を利かせる中、うらなりや山嵐との関係を通して正直者が損をする社会の歪みがより濃く描かれます。

だからこそ、坊ちゃんと山嵐がその理不尽にまっすぐ立ち向かう展開が、胸のすくような気持ちよさを味わわせてくれる1冊です。

草枕

俗を離れて非人情に世界を眺めようとする画工の精神を味わう物語

【出版年 / 形式 / 分量】

1906年 / 中編(雑誌掲載) / 文庫本 約150ページ前後

【おすすめしたい人】

内面世界や美意識を、格調高い文章でじっくり味わいたい人

【面白ポイント】

俗を離れて非人情に世界を眺めようとする画工の精神を味わう物語です。

主人公の余は、旅先で出会ったお那美に心を動かされながらも、あくまで画の対象として非人情の立場から見つめ続けます。

世間がお那美を勝手に評し、床屋が俗な尺度で切り分けるなかでも、その見方に流されないほど余の態度は徹底しています。

和尚が余の心がけを理解し、非人情を支える思想の存在が示されることで、単なる旅情小説ではなく、世界をどう捉えるかという視点そのものに読者を引き込みます。

最後に、久一の出征を見送るお那美の顔に「画になる瞬間」を見出す結末まで含めて、人間関係の起伏とは別のところで心を強く惹かれる一冊です。

野分

経済至上主義と相反する信念を、苦しみながら貫く人間の物語

【出版年 / 形式 / 分量】

1907年 / 長編(新聞連載) / 文庫本 約200〜300ページ

【おすすめしたい人】

信念を貫こうとする人間の孤独を、内面的で格調ある文体から味わいたい人

【面白ポイント】

経済至上主義と相反する信念を、苦しみながら貫く人間の物語です。

音楽会や結婚式でうまく立ち回れない高柳の孤独と、教師を追われ文筆家として生きようとする道也の不器用さは、二人を経済的にも社会的にも報われない立場へと追い込んでいきます。

それでも高柳の孤独主義と、生活苦の中でも哲学を曲げない白井道也の姿は、人の価値とは何かを強く問いかけてきます。

一方で、細君の生活苦への不満や、中野の現実的な慈悲が差し込まれることで、理想だけでは立ち行かない現実の重みが浮き彫りになります。

経済至上主義への鋭い批判と、信念を貫くことの苦しさが胸に残る、読後に深く考えさせられる作品です。

虞美人草

近代日本人の心と通俗をそれぞれの登場人物にのせて鮮やかに描いた物語

【出版年 / 形式 / 分量】

1907年 / 長編(新聞連載) / 文庫本 約350〜450ページ

【おすすめしたい人】

恋愛や倫理観をめぐる人間関係を、重厚な文体で読みたい人

【面白ポイント】

近代日本人の心と通俗をそれぞれの登場人物にのせて鮮やかに描いた物語です。

登場人物それぞれに与えられた哲学や道義、我といったテーマが人物同士の関係の中でせめぎ合い、物語を動かしていきます。

とくに藤尾の「我」と甲野母の「打算」が、宗近の「道義」によってあのラストシーンへと収束していくところは、この物語の見どころの一つです。

また、小野の感情・行動や、小夜子の受容の姿など、感情を揺り動かす場面も登場します。

読み終えたとき、人間の欲望や道義について考えさせられる1冊です。

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