記事概要

対象者
  • 小砂川チトさんの書籍を読んでみたい方
  • 純文学に挑戦してみたい方
目的
  • 手に取りたい小砂川チトさんの作品が見つかる

いちごバター

読書歴5年、2人で600冊以上読んできた本好き夫婦が、小砂川チトさんの長編作品の面白さをご紹介します!

小砂川チトさん作品の特徴

特徴

独創的な設定と現代的な文体で、現代の人間の在り方について問いかける

おすすめしたい人

▶ 独創的な設定の作品を楽しみたい方

「父」と教えられて育った坑夫の人形や、言葉を理解するボノボ、ゾンビ回収婦など、他では見かけない独創的な設定が数多く登場します。

その独創的な設定が物語のテーマと結びつき、唯一無二の読書体験を味わえます。

▶ 作品の根底に流れる哲学的テーマを味わいたい方

父との関係、個人と共同体のあり方、働く意味など、物語には現代社会への問いや作者の哲学が込められています。

設定や展開の奥にあるテーマを読み解く楽しさが大きな魅力です。

▶ 現代的で艶めかしい文体を楽しみたい方

現代的な語彙やリズムを取り入れた、新鮮で洗練された文体も特徴です。

場面転換や言葉選びにはどこか艶やかな空気が漂い、従来の文学とは異なる読書体験を楽しめます。

読む順番は??

それぞれ独立しているのでどの順番でもOK!

作品紹介

家庭用安心坑夫

父への狂おしい渇望の果てに、その渇望が崩れ落ちる物語

【出版年 / 分量 / 受賞歴】

2022年 / 128ページ / 第167回芥川賞候補作・第65回群像新人文学賞受賞

【面白ポイント】

父への狂おしい渇望の果てに、その渇望が崩れ落ちる物語です。

父は尾去沢のマネキン・ツトムであると母に教えられて育った小波が、東京の街中でツトムの姿を何度も見かけるようになります。

ある日夫に黙って尾去沢へと向かい、父への憧れのままにツトムのマネキンを盗み出してしまいます。

こうした小波の行動と並行して描かれる坑夫・尾去沢ツトムの挿話をメタファーとして読むと、父親への憧れの行き着く先が見えてきます。

一見突飛にも見える小波の感性に共感できる瞬間も多く、情緒と狂気が同居する文学的な一冊です。

猿の戴冠式

言葉によって個人となった者たちが、共同体の外で自らの尊厳を見いだす物語

【出版年 / 分量 / 受賞歴】

2024年 / 144ページ / 第170回芥川賞候補作

【面白ポイント】

言葉によって個人となった者たちが、共同体の外で自らの尊厳を見いだす物語です。

人間の言葉を理解するボノボ・シネノと、妨害行為をきっかけに炎上した競歩選手・しふみが動物園で出会います。

シネノは手話を扱う存在として注目され、しふみは炎上によって非難されるなど、二人はともに共同体から個人として切り出され、消費されていきます。

言語によって人々が個人へと切り分けられた世界で、二人だけは言語以前の共同体感覚を思わせる深いつながりを育んでいきます。

その先に描かれる「冠」が、共同体から与えられる栄光ではなく、一人の個人として歩み続けるための尊厳の象徴として心に残る一冊です。

ゾンビ回収婦

ゾンビを通して、AI時代の人間の存在価値と働く意味を問い直す物語

【出版年 / 分量 / 受賞歴】

2026年 / 160ページ / 第175回芥川賞受賞

【面白ポイント】

ゾンビを通して、AI時代の人間の存在価値と働く意味を問い直す物語です。

AIに仕事を奪われた「わたし」は、VR世界でゾンビ回収婦となり、再び自分の居場所を見つけようとします。

しかし、「わたし」が本当に求めていたのは仕事そのものではなく、仕事を通して支配人に認められ、自分の存在価値を確かめることだったと次第に明らかになります。

一方、VR世界の開発者は、AIゾンビが同じ行動へ収束してしまうことに頭を悩ませるなかで、群れから逸脱した個体に新たな可能性を見いだします。

画一化する社会への風刺を交えながら、働く意味だけでなく、役割や承認だけでは測れない人の価値とは何かを問いかける一冊です。

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