記事概要

対象者
  • ノーベル文学賞受賞作品を読んでみたい方
目的
  • 日本人のノーベル文学賞受賞作家の代表作を手に取るきっかけを得る

いちごバター

読書歴5年、2人で600冊以上読んできた本好き夫婦が、ノーベル文学賞受賞作家さんの代表作の面白ポイントを相関図を交えてご紹介します!

日本人ノーベル文学賞受賞者

受賞者川端康成大江健三郎
受賞年1968年1994年
受賞理由日本人の心の本質を非常に繊細に表現した、卓越した物語の技法によって詩的な力によって、生命と神話が凝縮された想像の世界を創り出し、現代の人間の苦境を描いた
代表作『雪国』
『伊豆の踊子』
『千羽鶴』
『山の音』
『古都』
『個人的な体験』
『万延元年のフットボール』
『芽むしり仔撃ち』
『同時代ゲーム』
『洪水はわが魂に及び』

川端康成の代表作

伊豆の踊子

世間に疎まれる者との交流が、孤独な青年の心を開いていく物語

【刊行年 / 分量】

1927年 / 文庫38ページ

【面白ポイント】

世間に疎まれる者との交流が、孤独な青年の心を開いていく物語です。

20歳の学生「私」は、孤独を癒すため伊豆を旅する中で、踊子・薫ら旅芸人一行と出会い、親交を深めます。

旅芸人たちの純粋な人間性に触れ、「孤児根性」に閉ざされていた主人公の心が、次第に他者へと開かれていきます。

物乞いとして世間から蔑まれる旅芸人たちが、社会的には恵まれた学生である主人公に温かさや心のつながりを与えるという逆転を通して、人間の真の豊かさを描いています。

そして最後には、惹かれていた薫との別れに至り、孤独から救われた喜びと別れの切なさが涙となってあふれてくる、川端康成を代表する美しき短編です。

雪国

美しい徒労に、締め付けられるような切なさを覚える物語

【出版年 / ページ数】

1948年 / 文庫148ページ(本編のみ)

【面白ポイント】

美しい徒労に締め付けられるような切なさを覚える物語です。

有名な冒頭文から始まり、雪国の澄んだ世界の中で、妻子持ちの島村と芸者の駒子の恋模様が描かれます。

とくに、島村に不器用ながらも全力で愛情を注ぐ駒子の姿が健気で、その思いが報われず、徒労となるところには胸を締め付けられます。

さらに、島村が葉子に惹かれていくことで、駒子と葉子の対照性が際立ち、恋愛感情のもつれがより複雑に絡みあっていきます。

雪国の情景に人の切なさと悲哀が重なり合う、繊細で美しい、川端康成を代表する一冊です。

大江健三郎の代表作

個人的な体験

障害を持つ赤ん坊の父親になることを拒む青年のアンモラルな葛藤を描いた物語

【出版年/ ページ数】

1964年 / 文庫258ページ

【面白ポイント】

障害を持つ赤ん坊の父親になることを拒む青年のアンモラルな葛藤を描いた物語です。

27歳の予備校教師・バードは、頭部に障害を持つ赤ん坊が生まれたことで、その死を望むというアンモラルな状況に陥ります。

現実から逃げるように仕事を辞め、愛人の火見子との関係を深めながら、かねてから夢見ていたアフリカへの逃亡を模索します。

また、世界で核実験の再開といった重大な出来事が起きても、「個人的な体験」に囚われる人間の深層心理と、過去の選択が現在にも影を落とす様が描かれます。

逃げ続けてきた男が最後に自らの選択と向き合うことで、障害を持つ子どもと生きることへの大江健三郎の思想が浮かび上がる一冊です。

万延元年のフットボール

過去の一揆を再現しようとする弟と、その破滅を見つめる兄の物語

【出版年/ ページ数】

1967年 / 文庫492ページ

【面白ポイント】

過去の一揆を再現しようとする弟と、その破滅を見つめる兄の物語です。

友人の死、脳に障害を持つ赤ん坊の誕生に絶望を抱えていた蜜三郎は、弟・鷹四に誘われ、故郷である四国の谷間の村へ戻ります。

そこで、鷹四は村の若者たちを集めてフットボールチームを組織し、万延元年に起きた一揆を再現することで、村の状況を変えようとします。

そんな鷹四と対照的に、自らの絶望に閉じこもる蜜三郎は、鷹四の行動を見つめながら、自分自身の生き方を模索していきます。

こうした一揆の再現が安保闘争と重なることで、過去の歴史が現在の社会や人間の行動に繰り返し現れる構造を描いています。

鷹四の破滅を経て、蜜三郎が新たな生き方を選ぶ結末に、人間の再生を模索する大江の思想が表れた挑戦的な一冊です。

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