記事概要

対象者
  • 今年(2026年)発売新刊の中から面白い書籍を見つけたい方
目的
  • 私たちが手に取った新刊の中から、手に取りたい一冊が決まる

いちごバター

読書歴5年、2人で600冊以上読んできた本好き夫婦が、今年手に取った新刊の面白さを、相関図を交えて紹介していきます!

※随時更新中

小説(単行本)

夏帆 | 村上春樹

善意と悪意の均衡を取り戻し、母との確執を乗り超える物語

【刊行日 / 形式 / ページ数 / 備考】

2026-07-03 / 長編小説 / 352p /

【面白ポイント】

善意と悪意の均衡を取り戻し、母との確執を乗り超える物語です。

26歳の絵本作家・夏帆を取り巻く世界は、数多くのメタフォリカルな動物が登場する幻想的な世界であり、まさに村上春樹の世界観が広がっています。

その中で、善意を象徴するアリクイの夫婦と、悪意を象徴するジャガーの対立を通して、崩れた善悪の均衡がどう取り戻されるのかが描かれています。

また、母に取りついたシロアリの女王との対峙を通して、母との確執を生み出した根源と向き合っていく展開も見どころです。

そして母との確執を乗り超えた先に待ち受ける結末は意味深であり、16冊目にしてなお初めての挑戦を感じさせる一冊です。

ゾンビ回収婦 | 小砂川チト

ゾンビを通して、AI時代の人間の存在価値と働く意味を問い直す物語

【刊行日 / 形式 / ページ数 / 備考】

2026-07-09 / 長編小説 / 160p / 第175回芥川龍之介賞受賞

【面白ポイント】

ゾンビを通して、AI時代の人間の存在価値と働く意味を問い直す物語です。

AIに仕事を奪われた「わたし」は、VR世界でゾンビ回収婦となり、再び自分の居場所を見つけようとします。

しかし、「わたし」が本当に求めていたのは仕事そのものではなく、仕事を通して支配人に認められ、自分の存在価値を確かめることだったと次第に明らかになります。

一方、VR世界の開発者は、AIゾンビが同じ行動へ収束してしまうことに頭を悩ませるなかで、群れから逸脱した個体に新たな可能性を見いだします。

画一化する社会への風刺を交えながら、働く意味だけでなく、役割や承認だけでは測れない人の価値とは何かを問いかける一冊です。

けんぐゎい | 朝倉かすみ

容姿や気質により圏外とされた女性たちを通して、人生を決めるものは何かを問う物語

【刊行日 / 形式 / ページ数 / 備考】

2026-04-22 / 長編小説 / 316p / 第175回直木三十五賞受賞

【面白ポイント】

容姿や気質により圏外とされた女性たちを通して、人生を決めるものは何かを問う物語です。

江戸時代後期を舞台に、痘痕、火傷痕、肥満体型などのコンプレックスを抱えた女性たちが、「圏外」での人生を受け入れ、新たな居場所を築いていきます。

また、人は誰しも善と悪の両面を抱えており、外見や才能といった表向きの特性だけでは人の本質は語れないことも示唆しています。

さらに、人生は「くじ引き」のように自ら選び取った結果なのか、それとも選びようのない境遇に左右されるのかという問いが描かれます。

時代小説でありながら、ルッキズムや自己責任論を映し出し、生まれや境遇を引き受け、どう生きるべきかを問いかける一冊です。

叫び | 畠山丑雄

過去の叫びと、自分を探す衝動が交差する物語

【刊行日 / 形式 / ページ数 / 備考】

2026-01-14 / 長編小説 / 144p / 第174回芥川龍之介賞受賞

【面白ポイント】

叫び 相関図

過去の叫びと、自分を探す衝動が交差する物語です。

同棲破棄され、大阪府茨木の地にひとり取り残された早野が先生と出会い、銅鐸づくりと地元史を学び始めることで物語は動き出します。

やがて地元史で知った川又青年の存在に強く惹かれ、満州で罌粟を咲かせた彼の人生と向き合っていきます。

銅鐸や万博のチケットといった象徴的な装置を通して、過去の“叫び”が現在に呼び起される展開が面白いです。

土地に飲み込まれず自分は何者になれるのかを問いかける熱量と、戦時下の叫びが交わる文学的な作品です。

青天 | 若林正恭

高校アメフト部を舞台に、生きづらさを抱えた高校生が生き方を模索する物語

【刊行日 / 形式 / ページ数 / 備考】

2026-02-20 / 長編小説 / 304p / 第175回直木三十五賞候補

【面白ポイント】

高校アメフト部を舞台に、生きづらさを抱えた高校生が生き方を模索する物語です。

卒業も危うく、部活引退後は不良グループにも身を置くなど、居場所を見失った中村昴は、中途半端な日々を過ごしていきます。

そんな中、後輩から再びアメフト部へ誘われ、引退した三年生として後輩たちの代に一人加わり、強豪校との再戦へ挑みます。

倫理教師との哲学的な対話を通して「勝てない勝負に挑む意味」を見いだし、試合では仲間と共闘する心地よさに気づきます。

勝敗だけでは測れない挑戦の価値や仲間とともに戦う意味を描き、生きづらさを抱える人の背中をそっと押してくれる一冊です。

オルロージュ | 小川哲

※準備中

【刊行日 / 形式 / ページ数 / 備考】

2026-09-30 / 長編小説 / 512p /

【面白ポイント】

小説(文庫)

新しい恋愛 | 高瀬隼子

大人になるにつれて変わっていく恋愛の見え方や価値観を描く5編の短編集

【刊行日 / 形式 / ページ数 / 備考】

2026-08-12 / 短編集 / 208p / 文庫化

【面白ポイント】

大人になるにつれて変わっていく恋愛の見え方や価値観を描く5編の短編集です。

「花束の夜」では、職場の先輩と関係を持つ女性を通して、仕事ぶりや周囲からの評価によって相手への見方が変わる大人の恋愛事情を描きます。

「お返し」では、幼なじみから毎年贈られていたバレンタインのチョコをめぐり、最後に贈られたチョコレートが心に残り続ける姿を描きます。

「新しい恋愛」では、ロマンス婚が理想とされる近未来を舞台に、その価値観に違和感を抱く女性の恋愛への向き合い方を描きます。

「あしたの待ち合わせ」では、長年にわたって片思いを寄せられてきた女性を通して、自分に向けられた好意を失いたくないという複雑な心情を描きます。

「いくつも数える」では、年の差婚をした上司に向けられる「気持ち悪い」という周囲の反応を通して、自身の異性との交遊関係や恋愛観を捉え直していく男性を描きます。

清潔な結婚 | 村田沙耶香

現代社会の価値観や人間関係を極端に推し進めた世界を描く短編集

【刊行日 / 形式 / ページ数 / 備考】

2026-08-12 / 短編集 / 208p / 新編纂

【面白ポイント】

現代社会の価値観や人間関係を極端に推し進めた世界を描く短編集です。

「変容」では、世代が変わるごとに価値観が大きく変化し、怒りや性愛さえなくなった社会に馴染めない主人公を描きます。

「コイビト」では、ぬいぐるみを恋人とする真紀が、同じくぬいぐるみを恋人とする美佐子に出会い、自分自身のあり方を客観的に見つめ直していきます。

「水槽」では、コンビニで働く従業員と水槽で泳ぐ金魚を対比させながら、後の『コンビニ人間』につながるテーマを描きます。

「清潔な結婚」では、性愛を伴わない「清潔な結婚」をした夫婦が子どもを望み、性行為を必要としない新たな妊活「クリーン・ブリード」を試みます。

いい子のあくび | 高瀬隼子

いい子の直子の強烈な内面を描く物語

【刊行日 / 形式 / ページ数 / 備考】

2026-05-21 / 中編 / 200p / 文庫化

【面白ポイント】

いい子の直子の、強烈な内面を描く物語です。

歩きスマホの人を避け続けることや満員電車の不快さなど、日常の小さな苛立ちが積み重なり、直子の内側にある人間への嫌悪がはっきり描かれます。

ヨシオカくんの自転車にあえて避けずにぶつかる最初の場面や、物語終盤の場面などは、その憎悪の深さを象徴する印象的なシーンです。

一方で直子は、桐谷さん、望海、圭さんに対して相手に合わせた「いい子」を演じ続けており、その振る舞いにいい子たるゆえんを感じさせます。

そんな直子をまっすぐな人間だと思い結婚を考える大地との関係も含め、人の内面のリアルを突きつける一冊です。

歌われなかった海賊へ | 逢坂冬馬

戦時下ドイツで、社会の規定に抗おうとする若者たちを描いた物語

【刊行日 / 形式 / ページ数 / 備考】

2026-08-05 / 長編小説(文庫) / 480p / 文庫化

【面白ポイント】

戦時下ドイツで、社会の規定に抗おうとする若者たちを描いた物語です。

当時のドイツでは、生まれや性別、思想、さらには存在価値までも国家によって規定されており、その息苦しさが生々しく描かれます。

そんな社会の中で、エーデルヴァイス海賊団の若者たちが体制に抗おうとする姿は、形こそ違えど現代で変革を起こそうとする者の姿に重なります。

また、アマーリエという存在を通して当時の一般大衆の迎合主義が炙り出される一方で、フランツという存在を通して、社会に疎まれた人々の本質が浮かび上がってきます。

重厚な歴史ドラマとしてだけでなく、時代が変わっても残り続ける「規定」への問いを投げかける作品であり、読後に深く考えさせられる一冊です。

君が手にするはずだった黄金について | 小川哲

小川さんが山本周五郎賞を受賞するまでの人間関係を観察・考察する物語

【刊行日 / 形式 / ページ数 / 備考】

2026-06-24 / 連作短編集(文庫) / 320p /

【面白ポイント】

小川さんが山本周五郎賞を受賞するまでの人間関係を観察・考察する物語です。

インチキ占い師、ポンジ疑惑の同級生、パクリ疑惑の漫画家など、世のグレーな人々を小川さんが鋭く観察していきます。

世の通説や友人の言説に惑わされず、自分で検証する態度で物事を考察していく姿が印象的です。

一方で、小川さん自身も都合よく記憶を書き換え、自分が恋愛においてグレーな立場であったことなどの気づきも描かれます。

エッセイのように読める連作短編集で、小川さんの作品の中でも比較的手軽に読める一冊です。

エッセイ・対談集

斜め45度の処世術 | 小川哲

当たり前を鵜呑みにせず、斜め45度から世界を切り取る知的ユーモアに満ちたエッセイ

【刊行日 / 形式 / ページ数 / 備考】

2026-04-01 / エッセイ / 170p /

【面白ポイント】

当たり前を鵜呑みにせず、斜め45度から世界を切り取る知的ユーモアに満ちたエッセイです。

小川哲さんが雑談や友人関係、日常生活などの身近なテーマを題材に、独自の視点から世の中や人間のあり方を考察しています。

自らをひねくれものと認める小川さんが、普遍的なテーマを少し角度を変えて語ることで、思わず笑ってしまう軽やかさが生まれています。

淡々とした語り口の中で示される論理的な違和感が、当たり前だと思っていた物事の前提を問い直し、読み手の思考を揺さぶります。

軽やかに楽しみながら、物事の見方を少しだけ更新してくれる一冊です。

こうやって作家は言葉を紡ぐ | 小川哲

作家の高度な創作論が浮かび上がる、小川哲さんと有名作家たちによる対談集

【刊行日 / 形式 / ページ数 / 備考】

2026-05-28 / インタビュー・対談集 / 504p /

【面白ポイント】

作家の高度な創作論が浮かび上がる、小川哲さんと有名作家たちによる対談集です。

小川哲さんがこれまでおこなってきた対談を収録し、作家同士が創作をめぐってさまざまなテーマで語り合う様子が一冊にまとめられています。

純文学、ミステリ、SF、エンタメ、ゲームシナリオなど、ジャンルの垣根を越えた対話が繰り広げられます。

その中で、題材の選び方、文体、作品内で描くこと、プロット、作品の構築方法など、作家ならではの思考や創作術を垣間見ることができます。

小川さん自身の思考を深く知るとともに、作家の思考の奥深さをまざまざと感じられる、作家志望の方必読の一冊です。

屁理屈と哲学 | 小川哲

小川哲さんの思考を味わえる、屁理屈めいた哲学のパンチライン集

【刊行日 / 形式 / ページ数 / 備考】

2026-09-04 / エッセイ・名言集 / 192p /

【面白ポイント】

小川哲さんの思考を味わえる、屁理屈めいた哲学のパンチライン集です。

担当編集者が、小川さんの小説や論文、書評などから、格言や寓話、思考の断片を123個選びまとめています。

人文科学から自然科学まで幅広い視座を持つ小川さんが作家ならではの想像力と言葉の力で紡ぎ出す、独特な屁理屈めいた哲学を味わえるのが本書の魅力です。

小川哲さんの小説を読んでいる方は、お気に入りの一節と再会する楽しみもある、肩の力を抜いてさらりと読める一冊です。

帳の向こう | 若林正恭・國分功一郎

現代社会の息苦しさを、繊細さと哲学から考える対談集

【刊行日 / 形式 / ページ数 / 備考】

2026-09-11 / 対談集 / 240p /

【面白ポイント】

現代社会の息苦しさを、繊細さと哲学から考える対談集です。

オードリーの若林さんと哲学者の國分さんが、資本主義や新自由主義、「目的と手段」に縛られた現代社会について語り合います。

新自由主義に違和感を抱く若林さんと、「暇」や「目的のない遊び」を説く國分さんの対話から、効率や成果を求める社会の息苦しさが浮かび上がります。

そんな現代社会で、目的のための手段ではなく、目的のない行為そのものを楽しむことや、哲学を通じて自分たちの生き方を捉え直すことの大切さが語られます。

忙しさや効率に追われる日々から一歩離れ、この時代をどう生きるかを考える一助となる一冊です。

孤独をのぞき込む | 小川洋子・東畑開人

小説家と心理学者が、物語を通して「孤独」と向き合う対談書

【刊行日 / 形式 / ページ数 / 備考】

2026-10-01 / 対談集 / 224p /

【面白ポイント】

小説家と心理学者が、物語を通して「孤独」と向き合う対談書です。

小説家の小川洋子さんと臨床心理士の東畑開人さんが、それぞれ持ち寄った計6つの物語を題材に、孤独について語り合います。

文学的な観点とカウンセリング的な観点から、登場人物が抱える孤独の質や背景を読み解き、それを現実社会の人々の孤独と重ね合わせて考えていきます。

孤独を否定的に捉えるだけでなく、自分と向き合う時間として肯定的にも捉え、物語に寄り添われながら「自分の物語」を生きることの大切さが示されます。

他者とのつながりを大切にしながら、自分自身とも向き合いたい人におすすめしたい一冊です。

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